食卓に自分だけの名前を。名入れ職人が綴る「暮らしと器」の愛おしい話

食卓に自分だけの名前を。名入れ職人が綴る「暮らしと器」の愛おしい話

竹堂園では“ものを扱う優しい手と心を育む”をコンセプトに、長年さまざまな子ども食器を製造販売してきました。

そんな器作りを支えていただいている大切なスタッフの紹介を不定期で行っていきたいと思います!

本日は名入れ職人のHさんにお話を伺いました🕊️

陶器のおままごとセット

『mamagototte-ママゴトッテ-』

 

「おままごとセット」を陶器で作る。そんな面白いアイデアは、Hさんとのお話から生まれました。

陶器という本物の素材に触れることで、小さな頃から「ものを大切にする心」を育んでほしい。そんな願いを込めたこのおままごとセットは、竹堂園のコンセプトとも深く共鳴し、知育玩具でありながら、実際に食卓で使える器として誕生しました。

なぜ今、陶器のおままごとなのか。その想いをぜひ、こちらのページよりご覧ください!

▼mamagototte-ママゴトッテ-

 

 

◾️あの日の衝撃と『職人』への憧れ

陶器が好きって思ったのはいつだろう……そう考えた時、小さい頃の記憶まで遡ります。 

父に連れられて行った、愛知県は常滑焼きの職人さんのこうぼう。そこにはオーバーオールを着て、頭はくるくるとした天然パーマの、まるで『およげ!たいやきくん』を歌っている人にそっくりな職人さんがいました。

口数は少なかったけれど、はにかんだ笑顔が優しかったことは今でも鮮明に覚えています。その方のおかげで、うちには父が嬉しそうに選んだ器たちが、今も実家の食卓を彩っています。

ある年のお正月、その職人さんから年賀状が届きました。 その宛名を見て、私は衝撃を受けました。

「きれいに見本通りに書きましょう」という参考書の字しか知らなかった私にとって、それは見たこともない世界でした。

めちゃくちゃ上手い人じゃないと書けない文字。でも、行書のように軽すぎず、太さと細さが絶妙にくずしてある、おしゃれな字。 台所で母が準備をする横で、こたつに入りながら、私はしばらくその年賀状に見入っていました。その時、初めて思ったんです。

「職人さんって、かっこいいな」って。

それから大人になり、私は今、竹堂園で器に名入れをする仕事に就いています。 陶器は私たちにとって「日常」でした。だからこそ、家族の性格も器選びにそのまま表れるのが面白いところです。


◾️家族の中にある「二つの正義」

夫は無駄が嫌いな「効率重視派」。食洗機に入れやすい器を選ぶ夫と、料理に合わせて器を選ぶ、そんな手間暇を愉しみたい私。

真逆の私たちは、娘たちの育て方でもよく話します。「遺伝子と環境、どっちが勝つかねぇ」と。

10年以上経った今、長女はというと……効率重視タイプなのです。

私生活も然り、学校制服の小さなトラブルすらも、自分なりの合理的な方法で瞬時に解決してしまう強さと、無駄を省くクールな判断力を持っています。

彼女が器を選ぶ時も、一番手前の取りやすいものを迷わずサッと手に取る。その迷いのなさが、私はとても頼もしいし、大好きです。

一方の次女は、何かを始めるとき、既製品に頼るのではなく、納得のいくまで自分の手で丁寧に作り上げるプロセスをとことん愉しむタイプ。

私が「えっ!?」と声を上げるような、そんな手間暇を愉しむ彼女の発想も、また愛おしい。彼女は自ら作ったデザートを乗せる器のために、戸棚の前で『どのお皿にしようかな?』としばらく悩みます。

性格は違っても、私たちが器と向き合う時間はみんな同じです。

 

竹堂園で名入れをしていると、私はあの日の職人さんの文字を思い出します。 効率を大切にする長女にも、手間暇を愉しむ次女にも、どちらの日常にも、自分だけの名前が入った器は「小さな宝物」になるはず。


◾️名入れ職人として、私が込めるものー明日も誰かのための名入れをー

日常の出来事を思い出しながら、今日も私は筆を持ちます。

 あの職人さんが私に見せてくれた、あの時の衝撃や憧れを、少しでも誰かに届けたくて。 どんな暮らしをしていても、どんな性格でも、食卓に並ぶ器だけは、その人らしく温かいものであってほしい。

これからも我が家の「遺伝子と環境の検証」は続きますが、まずは今日の食卓に、どの器を並べようかな。 そうやって悩む時間そのものが、私が皆さんに届けたい「暮らしの豊かさ」なのかもしれません。

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